立ち止まることを忘れてしまいそうな日々の中で、クリエイターたちに一服の仕方を聞いて訪ねる連載をスタートしました。“どんな風に一息ついてますか? ”という投げかけを、お茶を一杯飲んでもらいながら答えていただきます。「お茶を飲む」というモーメントを起点に、 自分だけの、何も考えない、のどかな時間をどうクリエイトしているのか。連載初回は、ヨーロッパに活動拠点を移すことになったモデル、アーティストのベイン理紗さんに登場いただきます。
彼女が日々の記憶・記録を書き留めてきたノートと、立ち止まることの関係性とは?
日常のなかで立ち止まってますか?
––1日の中で、休憩する時間はどのように作っていますか?
休んだり、立ち止まることは、意識的に取り入れています。もともと私は何かしてないとダメなタイプ。1週間の中で、7日間やっていることが違うような性格なんです。なのでインプットすることもアウトプットすることもピタっと止めないと、自分を見失っちゃうことがある。リセットというか、1回、休止ボタンを押すんです。脳や身体を休ませてあげる時間が必要。そうすることで、興味あることに飛びつけるように、敢えて余白を持てるように。
––そんな自分の性格を自覚できるようになったのはいつからですか?
中高校生ぐらいからです。サッカーを7年、バスケを6年、18歳までにスポーツしかやってこなかったんです。それでも高校生の頃にモデルを始めたきっかけをくれた人と出会うんです。彼は日芸の写真学科に通う中国人の留学生でした。その人の作品をみて、芸術を勉強したいと思ったんです。スポーツ推薦が決まっていたんですけど、部活は早期引退して、さっそく芸術の勉強を始めたんです。その時からですね。1つのことをやらなければいけないっていう、日本の部活動にある美学みたいなものが良くも悪くも崩れたんです。
––ひとつのことをやり抜くという美学もあるけれど、そうではない考えが芽生えたってことですね。
それからですね。モデルもする、写真も撮る、ギャラリーで働く、畑に興味もったら農作業だってする。やりたいことを自由に選択できるようになった反面、ときどき自分が何をしたいかを見失う瞬間もあるんです。それを正すために、立ち止まってひとりになれる時間をつくるんです。
コロナをきっかけに、自分で食べるものを自分の手で作れるように畑をはじめた。
自分史をまとめたスクラップノートたち
––具体的にどう立ち止まるんですか?
高校2年生の頃から、日記とリサーチノートを足したようなスクラップノートをまとめてます。現在までに積み上がったノートは、112冊。その日に学んだこと、知ったこと、見た景色、何かを買ったレシートや行った先のチケット、パンフレットなどを写真と一緒にコラージュして残しているんです。1日の終わりや週の終わりにそれをまとめることで、自分の中で整理ができるというか、記憶や記録が定着していってなんだか落ち着くんですね。
––現在もノートは記録し続けているんですか?
高校生の頃と比べると、吸収できる情報量はずいぶん減りましたよね。なので実際にメモする機会は減っていますけど「自分のなかに残す」という感覚こそ重要なんだなって思えるようになりましたね。昔はとにかくメモ帳に残すことをステータスにしていましたけど、そこに固執せずにもなりました。
––動くことと同じくらい「立ち止まること」も大切というお話ですが、ベインさんにとって「立ち止まること」の効能とはなんでしょうか?
この世界には情報が溢れていて、ときどきふと、垂れ流される情報の一部に自分自身がなっていないかと焦りを感じることがあるんです。このままずっと新しく出てくる情報を無自覚に受け取るだけでは、ロボットのようになっちゃうなって不安になることもあります。だからスイッチをオフにして、自分が何を考えて、情報に対してどう処理したいのか、自分の選択をブレずにするために休むことが重要だと思ってます。
「パッと見たときに、THE NODOKAの商品は手に取りやすいデザインだったことが印象的です。そして、手間暇をかけて淹れる本格的なお茶の味を、パウダー状できちんと再現できていて、手軽に楽しめるところも気に入ってます」
ベイン理紗 (べいんりさ)
モデル/アーティスト。1999年生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒。モデルとして広告やMV等に出演するほか、アルバムジャケットのデザインや展示を積極的に行なうなど表現媒体にとらわれない活動を続けている。日常生活から生まれた自らの記憶や体験を記録し続けたノートは100冊以上存在し、等身大に生きることや興味を絶やさないことを大切にしている。2023年9月よりヨーロッパに活動拠点を移し、オランダの大学院に向けて留学。
IG:@_lisabayne
photo:Futo Sasaki